2024年ドラフトでスパーズに8位指名を受けた後、ウルブスが30年、31年と2つの1巡目指名権を差し出して獲得したディリングハム。ですが、そのディリングハムは今シーズンのTDLでウルブスが2023年ドラフトで33位指名したミラーと共にドスンムとフィリップスとの交換でブルズへのトレードとなりました。それも2巡目指名権を4つもつけて。
コンリーの後釜として、エドワーズと共にウルブスの将来を担う存在として期待されていたディリングハムですが、ウルブスでの時間は約1年半ほどで終わりを迎えることになりました。ここにはウルブスの問題が大きく絡んでくるので、今回はそこについて書いていきましょう。
ディリングハムのNBA入りまで
まずは簡単にディリングハムについて。
高校2年生の時点でESPNなどの主要メディアから5つ星評価を受けていたディリングハムはU-16のアメリカ選手権でMVPを受賞し、3年生時にはオーバータイムエリートでプレー。その後ケンタッキー大学に進学、同じ24年ドラフトで3位指名のリード・シェパードと共に主にベンチからの出場で2024年のSECシックスマン賞を受賞。
カレッジでのスタッツをちょっとシェパードと比較してみましょう。カッコ内はシェパードのスタッツ。
32試合(33試合) 平均23.3分(28.9分)出場
15.2点(12.5点) FG 47.5%(53.6%) 3P 44.4%(52.1%)
アシスト 3.9(4.5) ターンオーバー 2.0(2.0)
TS 59.5%(64.0%) USG% 30.3%(18.3%)
ディリングハムがシェパードよりも得点を取っていたのは意外でしたが、それ以外はほぼ想像通りです。精度のところでかなり差があり、シューティングではシェパードの方が圧倒的に上。USG%にかなり違いがあるにも関わらず、アシストもシェパードの方が上。ディリングハムは典型的なアメリカ人ガードで、自分でハンドルしてオフェンスするタイプということがわかります。
さてここまでがディリングハムのカレッジまでの話。
ウルブス側の事情
ドラフトで4位と9位を持っていたスパーズが4位でキャッスルを指名すると続く8位でもディリングハムを指名。そこに2つの1巡目指名権(1つはTOP1プロテクト、1つはノンプロテクト)を使い獲得しに行ったウルブス。
ウルブスとしてはその年のプレーオフで20年ぶりのWCFに進出するも、ドンチッチ率いるマブスに1-4で敗退。PGのコンリーは平均30分出場で4.2アシスト1.0ターンオーバー。控えのNAWは平均15.5分の出場に留まり、1.6アシスト0.8ターンオーバー。まぁこのシーズンはカイル・アンダーソンがいて、ゲームメイクもやってくれていたのでNAWのこの数字は仕方ないのですが。
ただエドワーズが7.8アシストを記録している様に、エドワーズへの負担が大きいシリーズになりました。加えてコンリーの年齢やNAWなどの契約状況、サラリーの問題もあり、このドラフトでPGを欲しがったウルブスフロントの気持ちは分かります。
さらに24-25シーズンの開幕直前にタウンズをニックスに放出。ランドルの獲得となりましたが、実はタウンズの放出は前から計画はされており、そこでタウンズがいなくなった後のスター候補として上位指名の選手を手に入れる必要があったのかもしれません。この時点で獲得したランドル、そしてゴベアの契約は両方25-26年がPOだったので、ディリングハムのルーキー契約が切れるまでの契約延長であればそれなりにお金を使えるし、ディリングハムが活躍したら契約延長のタイミングでどちらかを減額するか、放出すればいいと考えたのでしょう。タウンズの契約が27-28のPOまであったので、そのままタウンズでもよかったのですが、それだと確実にサラリーが高くなることが分かっていたリードとの契約が難しくなってしまうと判断したのでしょう。
ということでウルブスとしては次の世代としてエドワーズ中心にマクダニエルズ、リード、ディリングハムでヤングコアを形成したかったが故に高い対価を支払ってでもディリングハムを取りに行ったのでしょう。
ウルブスの誤算
さてここからはNBAに入ったディリングハムの話になります。
まずはディリングハムのルーキーシーズンのスタッツ。
平均10.5分出場 4.5点 2.0アシスト 1.1ターンオーバー
FG 44.1% 3P 33.8% FT 53.3% TS 50.3%
Gリーグでも出場していたディリングハムですが、NBAでは49試合に出場。フィンチが育成が得意ではないことと、コンリーが予想以上に元気だったこと、NAWで怪我無く82試合出場し控えPGがNAWで十分だったことなどからそこまでの出場時間を得られませんでした。
コンリーとNAWが元気だったことはポジティブでしかなく、そこにディリングハムが割って入るような活躍を見せることが出来なかったのが問題の1つです。ですが、そもそもディリングハムは即戦力タイプではなく活躍には時間がかかるのはドラフト時から明白だったので、我慢して使い続ける必要がありました。
この記事を書くためにディリングハムのスカウティングビデオを見直したのですが、シュート力はあり、スピードも申し分なし、しかしドライブからのフィニッシュやツーメンゲーム、プレーメイキング能力はまだまだ足りず、この辺はNBAに入ってから鍛えないといけない部分でした。C&Sというよりもプルアップの方が得意そうでしたが、一応シューター的な動きも時折見せており、ウルブスフロントとしてハンドラーとして成長するまではシューター的に使いたかったのかもしれません。
ここにウルブスの誤算があったように思います。
ルーキー時代のディリングハムは成功率こそ33.8%とワン&ダンのルーキーにしては合格点と言ってもいいですが、NBAのクローズアウトにびびっているのかシュートを躊躇する場面が多く、チェックに来ているとバランスを崩してても足を出してファールを貰おうとしたり、カウンタードライブよりもパスを優先してしまうような消極性を見せてしまいました。ここはディリングハムが自分の得意なプレーに自信を持てなかったのか、それともフィンチの指導として正しいプレーを選択するように言われていたのかはわかりませんが、ブルズに移籍してからのコメントで「ここではミスが許容される」的なことを言っていたので、少なくともウルブスのコーチ陣がミスに対して寛容になれなかったのは確かでしょう。
しかし、一方で前のシーズンでWCFに進出していることもあり、勝利が至上命題だったことがディリングハムの育成に大きく影響したことも確かです。
ブルズに移籍してからのディリングハムはまだ3試合の出場ですが、スタッツを今シーズンのウルブスの時と比較してみます。カッコ内がウルブス時代です。
平均24.6分(9.3分)出場 11.0(3.5)点 4.0(1.7)アシスト
2.3(1.0)ターンオーバー 3.7(1.2)リバウンド 2.0(0.5)スティール
出場時間の増加によってすべての数字でルーキーシーズンも上回るキャリアハイの数字を残しています。3Pこそ16.7%と全く決まっていませんが試投数は0.9から2.0に増えており、試合に出しておけばこれくらいの数字は残せるポテンシャルはあったと言えます。
とはいえブルズでのプレーを見てもプレーレベルが上がったとは見えず、単純にミスを恐れなくなったことと、自分の得意なプレーを積極的に行う事でアピールできています。
つまり、ポテンシャルはあったがウルブスの求めるプレースタイルでは自分の強みを出せなかった。フィンチも最初のころはそれなりに使ってはいましたが、勝たなければいけない状況下でミスが多いディリングハムを使いづらくなっていった。ということでしょう。ここはウルブス側が即戦力的に使えると思っていた事が誤算でした。スカウティングで分からなかったのかなとは思いますが。
ただディリングハムには良い転機になると思うので、ポテンシャルを発揮して徐々に成長していければいいでしょう。幸いにもブルズのガード陣は今は選手が多いですが、契約が今シーズン限りの選手が多く、主力にはサイズもありディリングハムと並べてもそこまで問題が起こらなさそうなギディなので、まずはプレータイムを貰えているうちにシュート力とスピードで目立つことが大事です。
ウルブスの課題
これで貴重な1巡目を実質3枚失ったウルブス。
33位で指名しながら結局出番もほとんどないまま放出になったミラーも含め、ムーア、マイノットなど指名しながらも戦力にできなかった選手が多いウルブス。クラークとシャノンはそれなりに戦力にはなっていますが、どちらも上級生指名。まぁガルザやムーアは上級生だったのですがね。
ウルブスフロントとしてはガルザやムーアの失敗で上級生でも即戦力にならないと考え、その後のドラフトでは若い選手を取りに行った。しかし完成度が低い選手を使わないフィンチの問題もあり、再び上級生指名に戻ったとも見えます。
ディリングハムの放出をただのディリングハムのポテンシャル不足で片づけずに、フロントとしてどんな選手が必要なのかを考える必要があります。特にエドワーズとマクダニエルズという若い主力がいて、ランドル、ゴベアとちょっと癖のある選手を揃えている中では一芸に秀でているタイプや完成度の高い選手を指名するのが最善でしょう。ただフィンチは一芸系の選手を使うのが下手なので、出来れば完成度の高い選手。上級生であればスターターにはポテンシャルが足りなくても良いロールプレイヤーになれる選手が下位でも指名できます。
元々ドラフト下手なウルブスなのでそこまでの期待はできませんが、ここ数年でエドワーズと共に強豪の仲間入りを果たし、プレーオフ常連になってきたウルブスにとっては、ディリングハムという教訓からドラフト戦略を見直すタイミングなのかもしれません。